『遺言』とは
亡くなった方の財産は相続人が相続することとなりますが、遺言(亡くなった方の最後の意思表示)が無い場合は、相続人全員が法律で決まった取り分で法定相続するか、相続人全員で遺産分割協議をすることになります。
相続財産のうち、現金ならば相続人で分けることも簡単ですが、土地や建物、自動車、株券、農業機械器具等、分けることが難しく、誰か一人が相続した方がいいのではというものもあります。
相続人が遺産分割の協議をするとき、誰が相続するかで、話がまとまらないことも、少なからずあります。
そこで、亡くなられた方が生前どのような考えを持っていたか、誰に相続してもらいたかったかが分かれば、相続人としては助かります。
それが『遺言』です。『遺言』は、家族へ対する最後の語り掛け。自分自身の最後の意思表示となります。
『遺言』によって、自分自身の財産を、自分自身の意思により、相続人へ分けることが出来ます。
そして、自分自身の財産だけではなく、自分がいなくなった後の世界において、残された家族に対して、色々な思いを語り掛けることも出来ます。
『相続人』を確認
一、配偶者は常に相続人となります。
一、第1順位 子供
一、第2順位 直系尊属(親・祖父母等)
一、第3順位 兄弟姉妹
『遺言の内容』
基本的には自由です。
しかし、相続人の一人に全てを相続させ、他の相続人に取り分が無い場合等、相続人の遺留分(注)を侵害するような遺言の場合は、相続人間で争いが生じる事もあります。
誰に相続させるかをはっきりさせるため、遺言者から見た続柄と氏名、その者の生年月日で特定しましょう。法定相続人以外に遺産を承継する場合は住所・氏名・職業等で特定しましょう。
法定相続人に相続してもらう時には「相続させる」と書き、法定相続人に以外に遺産を承継してもらう時には「遺贈する」と書きましょう。遺贈とは、ご自身が死んだことを条件として効果の発生する贈与のことです。
(注) 遺留分とは、法定相続人(兄弟姉妹を除く)に認められた最低限相続できる取り分です。
例)
①、遺言者の有する一切の財産は、長男△△(昭和何年何月何日生)に相続させる。
②、次の不動産は、妻○○(昭和何年何月何日生)に相続させる。
不動産の表示
所在 春日部市~~~1番1 の土地
所在 春日部市~~~1番地1 家屋番号1番 の建物
(土地建物の所在は住居表示(住所)ではなく、権利証に書いてある地番で記載して下さい。)
③、次の預貯金は、長男△△(昭和何年何月何日生)に2分の1、二男□□(昭和何年何月何日生)に2分の1で相続させる。
◇◇銀行◇◇支店(口座番号~~~)
ゆうちょ銀行◆◆支店(口座番号~~~)
④、次の車は二男□□(昭和何年何月何日生)に相続させる。
トヨタ~~~(ナンバープレート~~~)
⑤、下記財産は、妻○○(昭和何年何月何日生)に相続させる。しかし、遺言者より先に妻○○死亡した場合は、長男△△(昭和何年何月何日生)に相続させる。
(遺言をしても相続してほしい人がご自身より先に亡くなってしまった場合はその部分に関しては遺言が無かったことになってしまいますので、このような条件をつけておくことも出来ます。)
⑥、本遺言書に記載の無い一切の財産は妻○○(昭和何年何月何日生)に相続させる。
(大きい財産を分けた後に、細かな部分に関してはその他一切の財産として相続させることも可能です)
⑦、次の預貯金は、長男△△のお嫁さん▲▲(昭和何年何月何日生)へ遺贈する。
⑧、この遺言はお父さんにもしもの場合があった時に遺しています。土地建物は前記のとおりお母さんに、預貯金は前記のとおり兄弟で相続して下さい。子供たちも結婚し立派な家庭を築いておりお父さんは安心しています。お母さんが自宅で一人になってしまいますので、兄弟で力を合わせてお母さんが寂しくないようにしてあげて下さい。死後、葬式や法要等色々と手間が掛かりますが、お父さんの性格上質素にやってもらえればと思います。仕事ばかりのお父さんでしたが、孫の顔も見ることができ、幸せな人生でした。ありがとう。PS:犬のシロは踏切で電車を見るのが好きなので、散歩の際は踏切で少しの間待ってあげて下さい。
(このような遺された家族に対する手紙的な内容を書くこともOKです。これを「付言」と言い、遺言の最後に記したりします。)
『最後に』
ご自身が書かれた遺言は、新たな遺言によって撤回・修正・削除することが出来ます。遺言の日付が新しいものが優先しますので、何度でも書き直してみましょう。
一部分のみ修正する新しい遺言をすれば、古い遺言はその抵触しない範囲で有効です。古い遺言を失くしてしまって、内容を憶えていなくて困った時は、「以前書いた遺言の全てを撤回する」旨を記載してから新しい遺言を書くことをお勧めします。
遺言を書いても、ご自身の死後に発見されなければ意味を成しません。信頼がおける相続人には遺言の存在だけは伝えておきましょう。
遺言は法律上の体裁を備えていれば基本的には自由に作成することが出来ますが、体裁を備えていないと遺言自体が無効になってしまったり、相続人間の無用な争いを生んでしまったりしますので、弁護士や司法書士等の法律家にチェックしてもらいましょう。
遺言書を書いているうちに、ご自身の半生を振り返ってみて、様々な思いが生まれてくると思います。ご家族やお世話になった人、お世話した人、ご自身の回りの人々のことを考えつつ、ご自身がいなくなった後の世界を想像してみましょう。そして、最後にできる語り掛けを書面に遺してみましょう。